【ビオフェルミン、ミヤBMなど】整腸剤の特徴と使い分け
- 2019.02.24
- 薬の勉強

整腸剤って色々な種類があるけど違いはなんなの?どうやって使い分けているの?効果はあるの?と、 普段よく処方される整腸剤ですが、ふと考えてみると色々と疑問に思うことがあるかもしれませんね。
この記事では
整腸剤の分類
整腸剤の特徴
整腸剤の使い分け
についてまとめてみたいと思います。
整腸剤の特徴と使い分け
整腸剤の分類
日本でよく処方される整腸剤の成分は以下のように分類されます。
- ビフィズス菌
- 酪酸菌(宮入菌)
- ラクトミン/糖化菌
- ラクトミン/糖化菌/酪酸菌
- 耐性乳酸菌
大きく分けると生菌製剤と耐性乳酸菌製剤にわけられます。ラクトミンは乳酸菌の一種です。
ビフィズス菌はラックビーやビオフェルミン、酪酸菌はミヤBMの成分です。同じ成分でも薬剤によってその含量や菌種が異なります。主な薬剤についてそれぞれまとめます。
ビフィズス菌
商品名:ビオフェルミン錠
菌種:Bifidobacterium bifidum
含量:1錠中にビフィズス菌12㎎
商品名:ラックビー微粒N、ラックビー錠
菌種:Bifidobacterium longum,Bifidobacterium infantis
含量:1錠または1g中にビフィズス菌10㎎
酪酸菌(宮入菌)
商品名:ミヤBM細粒、ミヤBM錠
菌種:Clostridium butyricum
含量:1g中または2錠中に宮入菌末40㎎
ラクトミン/糖化菌
商品名:ビオフェルミン配合散
菌種:Streptococcus faecalis,Bacillus subtilis
含量:1g中にラクトミン6㎎、糖化菌4㎎
ラクトミン/糖化菌/酪酸菌
商品名:ビオスリー配合散、ビオスリー配合錠
菌種:Streptococcus faecalis,Bacillus mensentericus,
Clostridium butyricum
含量:1g中にラクトミン10㎎、糖化菌50㎎、酪酸菌50㎎
1錠中にラクトミン2㎎、糖化菌10㎎、酪酸菌10㎎
耐性乳酸菌
商品名:ビオフェルミンR
菌種:Streptococcus faecalis
含量:1g中に耐性乳酸菌6㎎
糖化菌と乳酸菌、酪酸菌と乳酸菌は共生作用があり、菌数が大幅に増加するといった性質があります。糖化菌と乳酸菌では乳酸菌単独に比べて12.5倍、酪酸菌と乳酸菌では酪酸菌単独に比べ11.7倍に増加することが確認されています。
整腸剤の特徴
添付文書上の効能効果は、生菌製剤は「腸内菌叢の異常による諸症状の改善」、耐性乳酸菌製剤は「抗生物質、化学療法剤投与時の腸内菌叢の異常による諸症状の改善」とされていますが、菌種によって、消化管部位に対する親和性、付着性、物質代謝能などが異なります。各整腸剤の特徴についてまとめます。
ビフィズス菌
増殖部位:小腸下部から大腸にかけて増殖
産生物質:乳酸および酢酸を産生
特徴:有害菌増殖抑制、腸管運動促進などを示す
酪酸菌
増殖部位:大腸で増殖
産生物質:酪酸の産生能が高い
特徴:芽胞を形成(抗菌薬の影響を受けにくい)
腸粘膜機能改善、有害菌の発育阻止作用などを示す
乳酸菌
増殖部位:小腸から大腸にかけて増殖
産生物質:乳酸の産生能が高い
特徴:増殖能が高い。有害菌の発育阻止、腸粘膜の保護作用などを示す
糖化菌
増殖部位:小腸上部より増殖する
特徴:芽胞を形成。乳酸菌の増殖促進などを示す
耐性乳酸菌
特徴:耐性乳酸菌は各種抗菌薬に高度の耐性を付与された乳酸菌。抗菌薬投与時も死滅せずその効果を発揮する。ただし、限定された抗菌薬にのみ耐性を示すため、使用の際はその適応に注意する必要がある。
どれほどの耐性を示すのかは以下の表を見てみると良く分かります。
ビオフェルミンR散、ビオフェルミン錠 インタビューフォームより
原株とMICが変わらないものもありますが、多くの抗菌薬に対し何倍ものMICになっていることが分かります。
生菌製剤でも、芽胞を形成するものは耐性を付与せずとも抗菌薬の影響を受けがたい特徴があります。
整腸剤の使い分け
結論を言いますと
整腸剤の使い分けのエビデンスは確立されていない
なんとも消化不良な話になってしまい申し訳ありません。
Up To Dateで調べてみたところ、プロバイオティクス※は様々な症状を改善・予防するのに有望ではあるが、多種多様な菌種での報告であり、その多くは小規模な試験のために、有効性に関して明確な結論を下すのが困難と記載されていました。
※プロバイオティクス:宿主に有益な作用を示す生きた微生物、またはそれを含む食品
つまり、整腸薬の使い分け以前に、そもそも効果を明確に示すことができないということです。
しかし、様々な症状を改善・予防する効果が数多く報告されており、また、安全性は極めて高いため、少しでも効果が期待できる疾患であれば整腸剤を使用することに大きな問題はないと思われます。
例えば、急性の感染性下痢に対するプロバイオティクスの使用は下痢の期間を短縮することがメタ解析により示されています。プロバイオティクスは下痢症状持続時間を約25時間短くし、4日以上症状が持続するリスクを59%減少させるとのことです。
また、抗菌薬関連下痢症の予防に対してもプロバイオティクスが有効であるとの報告があります。
使い分けはないものの、先に記載した通り各薬剤に特徴がありますので、例えば、抗菌薬を投与している方には耐性乳酸菌や芽胞を形成する酪酸菌製剤を使用するなど特徴に基づいた薬剤選択を行うべきだとは思います。
まとめ
本稿をまとめますと
- 整腸剤は生菌製剤と耐性乳酸菌製剤に大別される
- 生菌製剤でも芽胞を形成する菌は抗菌薬の影響を受けがたい
- 菌種によって消化管部位に対する親和性・代謝能が異なる
- 整腸剤の使い分けのエビデンスは確立されていない
- 急性の感染性下痢に対するプロバイオティクスの使用は下痢症状持続時間を短縮する
- 抗菌薬関連下痢症の予防にプロバイオティクスが有効との報告がある
今回はここまで
最後まで読んでくださりありがとうございました。ではまた次回。
参考資料
- 整腸剤の使い分け 日本医事新報 No.4706 2014.7.5
- みんなで解決病棟のギモン 第11回 整腸剤はどういうときに使うのか? レジデントノート VoL.18 No.16(2月号)2017
- 薬剤有害事象をいかにプロバイオティクスで制御するか?! 抗菌薬関連下痢症に対するプロバイオティクスと抗菌薬感受性 薬局 2017 Vol.68. No.11
- ビオフェルミンR散、ビオフェルミン錠 インタビューフォーム
- Probiotics for treating acute infectious diarrhoea. PMID:21069673
- Up To Date Probiotics for gastrointestinal diseases
-
前の記事
【肺癌抗がん剤】アテゾリズマブと化学療法併用レジメンのまとめ【IMpower150】 2019.01.19
-
次の記事
記事がありません