【肺癌抗がん剤】アテゾリズマブと化学療法併用レジメンのまとめ【IMpower150】

【肺癌抗がん剤】アテゾリズマブと化学療法併用レジメンのまとめ【IMpower150】

2018年12月21日に以下のアテゾリズマブ(商品名:テセントリク)の用法・用量が追加されました。

化学療法未治療の扁平上皮癌を除く切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌患者の場合

カルボプラチン、パクリタキセル及びベバシズマブ(遺伝子組換え)との併用において、通常、成人にはアテゾリズマブ(遺伝子組換え)として1回1200mgを60分かけて3週間間隔で点滴静注する。なお、初回投与の忍容性が良好であれば、2回目以降の投与時間は30分間まで短縮できる。

アテゾリズマブと化学療法併用レジメンってどんな治療なのか?効果はどれくらいなのか?どんな副作用が出るのか?などと気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか?

今回の記事では臨床試験(IMpower150)の結果を基に、アテゾリズマブ+ベバシズマブ+カルボプラチン+パクリタキセル療法の効果、副作用、治療方法をまとめます。

※記事を書いている人

僕は薬剤師として抗がん剤治療を行う方に治療の説明を行っていたり、薬の調製をしています。また、がん薬物療法認定薬剤師の資格を取得するなど、普段から抗がん剤治療に携わりつつ勉強しています。

【肺癌抗がん剤】アテゾリズマブと化学療法併用レジメンのまとめ【IMpower150】

【肺癌抗がん剤】アテゾリズマブと化学療法併用レジメンのまとめ【IMpower150】

治療の効果

臨床試験(IMpower150)の結果(無増悪生存期間、全生存期間、奏効率)を示します。この試験では、化学療法を受けたことのない転移性非扁平上皮非小細胞肺癌(NSCLC)患者に対するアテゾリズマブ+ベバシズマブ+カルボプラチン+パクリタキセル療法(ABCP)とベバシズマブ+カルボプラチン+パクリタキセル療法(BCP)が主に比較されています。

これらの結果は以下の3つの患者背景に分けて示されています。

  1. EGFR 遺伝子変異又はALK 融合遺伝子が陽性の方と陰性の方(陰性=WT集団)
  2. 腫瘍内エフェクターT細胞(Teff)の発現量が高い方と低い方
  3. アテゾリズマブの薬理作用部位であるPD-L1の発現量が高い方と低い方(下図BでいうTC~やIC~のこと。表の上から下にかけて発現量が低くなっている。TCは腫瘍細胞、ICは腫瘍に浸潤している免疫細胞を指す)

2と3は前提として「WT集団の患者」の間で評価され、分けられています。

臨床試験の主要評価項目は「WT集団の無増悪生存期間」、「Teff高発現群の無増悪生存期間」、「WT集団の全生存期間」です。

無増悪生存期間(PFS)

無増悪生存期間(PFS=Progression-Free Survival)とは治療中(治療後)にがんが進行せず安定した状態である期間のことです。本試験のPFSは下図にまとめられています。

IMpower150治療効果

Atezolizumab for First-Line Treatment of Metastatic Nonsquamous NSCLC N Engl J Med 2018; 378:2288‐2301より

図のAではWT集団の無増悪生存期間が示されています。図Bでは3つの集団における無増悪生存期間が示されています。

主要評価項目であるWT集団のPFSの中央値は8.3ヶ月となっています。

各集団を見てみると、PD-L1の発現量が低いよりも高い方が(TC3 or IC3=12.6ヶ月)、腫瘍内エフェクターT細胞の発現量が低いよりも高い方がPFSがより長くなっています。(Teff高い方=11.3ヶ月)

遺伝子変異がある群においてもBCP療法にくらべABCP療法の方が効果が良いようです。集団を分けずに解析した結果でもPFSの中央値は8.3ヶ月となっています。

全生存期間(OS)

全生存期間(OS=Overall Survival)とは治療法の割り付け開始日もしくは治療開始日から患者さんが生存した期間のことを示します。

OSAtezolizumab for First-Line Treatment of Metastatic Nonsquamous NSCLC N Engl J Med 2018; 378:2288~2301より

WT集団のOSの中央値は19.2ヶ月となっています。BCP群に比べて約5か月ほど延長しています。

治療の副作用(有害事象)

主な副作用(有害事象)は以下のように報告されています。

副作用リスト

Atezolizumab for First-Line Treatment of Metastatic Nonsquamous NSCLC N Engl J Med 2018; 378:2288~2301より

Grade1-2は軽度~中等度、Grade3-4は高度~生命を脅かす程の有害事象のことで、Grade5は有害事象による死亡を指します。

ABCP療法の部分を日本語に訳すと(%)

有害事象(日本語)

治療関連死は11人(2.8%)の方にあったとされています。そのうち5人は肺出血または喀血によるもので、5人中4人は高リスクな背景の方だったようです。(大血管への腫瘍浸潤または空洞形成)

Grade3-4の中では好中球減少の頻度がやや高めですので、治療を受けられる方は手洗い・うがいなどの感染症対策を心掛けて頂きたいです。

また、頻度は高くないですが、アテゾリズマブなどの免疫チェックポイント阻害薬は免疫の過剰な反応による副作用(免疫関連有害事象)が起こりえます。間質性肺炎、大腸炎、内分泌障害等の症状に気が付いた場合は医療機関へ連絡をして頂きたいと思います。

治療の方法

施設により多少違いはあるかと思いますが、治療方法(投与時間)は以下の通りです。

ABCP療法の投与方法

21日に1回の点滴治療を行います。初回は約7時間の治療となります。2回目は6時間、3回目以降は5時間30分と段々と時間は短縮可能です。前投薬は上記の他にもH1ブロッカーの内服薬を使用します。これらはパクリタキセルによるアレルギーや治療による吐き気を予防するために使用します。

4 or 6コースの治療を終了した後は、アテゾリズマブとベバシズマブのみの治療となります。これらは症状が増悪する、若しくは耐えられない副作用が起こるまで継続して使用します。

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まとめ

まとめ

本稿をまとめると

  1. WT集団のPFSの中央値は8.3ヶ月。
  2. WT集団のOSの中央値は19.2ヶ月。
  3. 治療関連死の頻度は2.8%。Grade3-4の有害事象では好中球減少の頻度がやや高め。感染予防に努めて欲しい。
  4. 頻度は高くないが、免疫関連有害事象に注意が必要。間質性肺炎、大腸炎、内分泌障害等の症状に気が付いた場合は医療機関へ連絡を。
  5. 21日に1回の点滴治療を行う。初回治療は7時間ほど治療に時間を要する。段々と投与時間は短くできる。

以上です。少しでも治療を受けられる方、行う方の参考になれば幸いです。

今回はここまで。

最後まで読んでくださりありがとうございました。ではまた次回。

参考文献

Atezolizumab for First-Line Treatment of Metastatic Nonsquamous NSCLC N Engl J Med 2018; 378:2288-2301