HIVについて勉強してきたよ~ドルテグラビルを用いた2剤療法など~

HIVについて勉強してきたよ~ドルテグラビルを用いた2剤療法など~

ここのところ毎週のように学会に参加させて頂いてます。ありがたや。

今週は「第32回日本エイズ学会学術集会・総会」に参加してきました。忘れないうちに学びを記していきます。

ドルテグラビルを使用した2剤療法について

これまでHIVに対する治療法は、key drug1剤とback bone2剤を使用した3剤での治療が基本とされてきました。現在の治療法はとても効果が高く、安全性も高いのですが、さらに副作用や相互作用、コスト等々の面においてより良い治療方法が開発されてきています。ドルテグラビル+リルピビリン(DTG+RPV)、ドルテグラビル+ラミブジン(DTG+3TC)といった2剤レジメンです。

DTG+RPVの配合錠は2018年11月26日に製造販売承認を取得しています。 ヴィーブヘルスケア株式会社 初めての 2 剤レジメン(2DR) 「ジャルカ配合錠」の承認を取得

両レジメンとも治療成功率は従来の3剤レジメンと遜色ない結果を示しています。今後のガイドラインの改定でどのような位置付けの治療法となるのか注視していきたいと思います。

NRTI-sparing regimenについて

NRTI(ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬)はback boneとして重要な役割を果たします。しかし、副作用や腎機能障害、薬剤耐性などの問題が生じた際にはこれらを使用しないNRTI-sparing レジメンが選択肢にあがります。

ある施設では以下のようなレジメンが用いられているとのことでした。

  • ドルテグラビル+ダルナビル+リトナビル(DTG+DRV+rtv)
  • ドルテグラビル+リルピビリン(DTG+RPV)
  • ラルテグラビル+ダルナビル+リトナビル(RAL+DRV+rtv)
  • ラルテグラビル+リルピビリン(RAL+RPV)
  • ラルテグラビル+エトラビリン(RAL+ETR)
  • ダルナビル+リトナビル+リルピビリン(DRV+rtv+RPV)
  • ダルナビル+リトナビル+エトラビリン(DRV+rtv+ETR)

DTGとETRは相互作用にてDTGの血中濃度がガクッとさがってしまうため、こちらの組み合わせは使用されません。

これらレジメンの殆どはエビデンスに乏しいため、個々の患者さん背景を良く考慮して使用すべきとのことでした。

薬物相互作用、薬物血中濃度測定について

抗HIV薬は薬物相互作用が多く、薬剤師の腕の見せ所です。学んできたのは

  • 基質薬同士の競合の相互作用はそれほど影響はない。
  • エファビレンツ(EFV)はCYP3A4の誘導薬であり、阻害薬であるが、その力は誘導>阻害である。
  • リファンピシン(RFP)の酵素誘導は1~2週間かかる。中止後も同様に1~2週間で誘導が収まる。
  • CYPの阻害作用・誘導作用の程度はその薬剤の血中濃度に相関する。
  • テノホビル アラフェナミドフマル(TAF)はコビシスタット(cobi)により血中濃度が上昇する。ただ、問題のない範囲の上昇であるため併用はできると思われる。
  • CYP活性は加齢により低下する。一方、グルクロン酸抱合能は変化しない。

こんな感じ。

また、薬物血中濃度測定(TDM)も治療中の不具合(効果不十分・副作用発現・相互作用・服薬中断など)を確かめるのに強力な武器となります。学んだのは

  • 通常、TDMは定常状態に達した頃に行う。2週間程経過していればOK。
  • 基本はトラフ値を測定する。
  • 副作用との関連を調べる際などはピーク値も測定してよいが、食事の影響や消化管の影響などがありバラツキが大きいため効果との関連を調べるのには不向き。
  • 食事時間と服薬時間を確認する。
  • 血中濃度は各ガイドライン収載の値やインタビューフォームの値を参考に評価を行う。

こんなかんじ

薬物相互作用の情報は目がくらむほど多いですが、有用なツール(リバプール大学のサイトなど)がありますので、これらを使いこなしていきたいと思います。

薬剤耐性について

HIV治療の難儀な点としては薬物血中濃度が保てなくなると(服用をしていない、薬物相互作用などが原因)ウイルスが耐性を獲得してしまう点です。これについて学んできたことは

  • 新規患者さんの7.7%に何かしらの薬剤耐性(ウイルス変異)がみられる。しかし、これらは治療に問題をきたす変異ではない。
  • DRVとDTGは耐性が生じにくい。(ジェネティック・バリアが高い)
  • スタンフォード大学のサイトが耐性の評価に使える。
  • ウイルス量が多いときの耐性検査の結果は信頼性が低い。

耐性を獲得させないためにも血中濃度を下げてしまうような薬物相互作用には十分注意していきたいです。

終わりに

いやー。学びが多かった学会でした。上記の他にも

  • うつ病は炎症性疾患である。
  • インターフェロンはトリプトファン⇒セロトニンの生合成を阻害する。なので、うつの副作用がある。
  • SSRIは抗炎症作用を示す。

など、精神疾患についての勉強やC型・B型肝炎についての勉強もできました。もうお腹いっぱいです。笑

今後も継続して勉強して、治療に貢献したいと思います。

ではまた次回。

※お願い

内容の正確性に気を付けてはおりますが、本記事はあくまで個人の備忘録でありますので「ふーん、そんなこともあるんや」というスタンスでご覧いただければと存じます。なにとぞ。