【学会参加記】第27会日本医療薬学会

【学会参加記】第27会日本医療薬学会

11月3~5日と千葉で行われた日本医療薬学会年会に参加してきました。

この学会には久々の参加でした。前に参加したのは6年前という。笑

ここのところずっとエイズ学会に参加してばっかりだったからなぁ。

感想としてはとても学びが多く、刺激になった学会でした。

学会に参加した目的は、

①自身に関連する分野(がん、HIV、災害医療)の情報を得る。
②自身の知識の幅を拡げるきっかけとする。
③他施設の方と交流し刺激を得る。

こんな目的を持って参加してました。

目的に沿って順に学びをつらつらと書き留めておきます。

まず、

①自身に関連する分野(がん、HIV、災害医療)の情報を得る。

【がん】

免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitor:iCI) 関連

・免疫関連有害事象(ir-AE)は予防、診断が難しい。早期発見が重要。

・ir-AEに対するステロイド等の免疫調節薬はiCIの効果には影響しない。

・副作用発現時期は不明である。2か月ごろが多いようだが、治療中止後も出現する等、幅広い。

・大腸炎のir-AEが開始4日後に出現することがあった。早期の副作用出現もありうる。

・ステロイド不応のir-AE大腸炎に対してインフリキシマブを使用するが、タクロリムス等の免疫調節薬はデータがない。

・放射線肺臓炎は6か月以内に出現するのが通常。しかし、iCIを使うと6か月以降に出現することがある。(リコール現象)

・iCIによる間質性肺炎(IP)はチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)によるものよりも進行が遅く、ステロイドがよく効く。しかし、ステロイドを切ると再燃することがある。

・IPは画像よりも息切れや捻髪音などの所見が早く出る。早期発見のポイントとなる。

・ペンブロリズマブが200㎎の固定容量の理由は

・2㎎/㎏で95%、0.2㎎/㎎で80%のレセプターを占有する。⇒減量は意味ない!

・2㎎/㎏と200㎎でAUCに差がない。

・固定容量は廃棄がない、調整ミスがないといったメリットがある。といった理由から。

・代謝は細胞内のリソソームに取り込まれ、プロテアソームで分解される。

・代謝は飽和するので、非線形の薬物動態を示す。半減期が長くなる。

・腎・肝障害時でも薬物動態に影響がない。

・薬物相互作用はないが、後治療にチロシンキナーゼ阻害薬を使うと間質性肺炎の副作用が出やすい等、薬力学的な相互作用がある。

・喫煙歴有、ir-AE有の患者は効果が良いかもしれない。(肺がん)

・九州大学では適正使用のため各科が一律の検査ができるように、検査項目と時期を統一している。この検査項目の中にサイトメガロウイルスの検査であるC7-HRPも入っていた。なんでだろう?

iCIは今注目の薬なだけあって情報が多かったです。

②支持療法の個別化

・リツキシマブによるinfusion reactionのリスク因子としてindolentとBulky massがある。この因子があれば投与法はA法ではなく従来法のB法のほうが良い。ウチは全員B法な気がするから関係ないか??

・今後の制吐療法は費用対効果を考えるべき。

・食道がんに対するDCF療法では60歳以上が好中球減少のリスク因子。

費用対効果を考えることが重要であると改めて考えさせられました。ウチのグラニセトロン3㎎を1㎎に変えていければと思いました。

③その他

・抗がん剤の肝・腎機能障害時のDoseについての情報源はPDR(Physicians’ Desk Reference)が良い。情報量が多く、無料である。Up to dateは情報量は多いが有料。

・TKIによるざ瘡様皮疹の副作用はロキソニン内服で軽減される。

・イリノテカンによる好中球減少はアルカリ化(ウルソ600㎎/日、重曹1.8g/日、酸化Mg適量)で抑えられる。

・UFT/LV療法は8時間ごとの内服が用法であるが、±2hrまでなら許容範囲である。(大鵬薬品のDI)

ウチはUp to dateが見ることができるから、PDRは参考にしなくても良いかな?

以上、がん関連の情報は沢山キャッチすることができました。

さてつぎ、

【HIV】
ゲンボイヤ・スタリビルドは簡易懸濁法での投与が可能。

HIVはこれだけ。笑

元々発表等が少ないうえに、情報に触れる時間が少なかったので仕方がない。

【災害医療】

・職員の安否確認に緊急安否確認システム(MRT株式会社)を活用している施設がある。

・災害時の薬品配送について卸との協定を結んでいる施設がある。

・日赤薬剤師会は独自の災害用処方せん(施設/医療班どちらも使用可)の様式を作成している。

インターネットを活用した安否確認システムは便利だと思う。けれど、導入にコストがかかるのと、インターネットがつながらなかったらどうするの?といった問題点はあると思う。日赤薬剤師会が処方箋の様式を作っているのは知らなかった。ウチも様式を揃えたほうがいいのかなぁ。卸と協定を結べたらいいけれど、うちは病院の周りが液状化するからなぁ。実効性が低いかもしれない。何もしないよりは良いかもしれないけれど。

さて、自身の関連する分野の学びは以上。

②自身の知識の幅を拡げるきっかけとする。

【救急・集中治療関連】

①薬剤・機器との配合変化

・亜硫酸塩(抗酸化剤)を含む薬剤はジスルフィド結合を開裂させる。

・投与ルートのフラッシングは5mLでは不十分である。10mL以上が良い。

・側管投与の薬剤のルート内の接触時間は意外と短い。この時間を求める計算式がある。(計算式をメモすることができなかった。)

・ECMOとフェンタニルで配合変化がある。フェンタニルが吸着される。モルヒネは大丈夫。

・PMXのAN69ST膜はナファモスタットを吸着する。

②患者の状態把握
・臓器別に評価をすると患者を理解しやすい。呼吸と循環を中心にモニタリングすると良い。
・臓器別評価
・肺:呼吸数、呼吸様式、呼吸音、酸素、人工呼吸器の有無、血ガス、X線写真、CT
・心:血圧、心拍数、末梢チアノーゼ、尿量、下大静脈径、心電図、心エコー
・意識:GCS、CPOT、BPS、NRS、RASS、CAM-ICU、ICDSC、痙攣、脳波、瞳孔径
・腎:尿量、BUN、Cre、Kなど

③敗血症

・抗菌薬投与は1時間以内が良い。抗菌薬投与は蘇生であるという認識が重要。

・敗血症時のPK/PDの変化に注意する。

・分布容積:血管透過性の亢進により増大する。個人差は大きい。

・低アルブミン血症:たんぱく結合率が高い薬剤のクリアランスが増大する。

⇒患者個々に合わせた治療が必要

・鎮痛・鎮静は過剰とならないようにする。

・鎮静時は深部静脈血栓(抗血栓)、角膜障害(人口涙液)、消化管運動(モサプリド、大建中湯)の抑制に対し薬剤の使用を提案できる。症状が落ち着いたら提案した薬剤のOFFを考える。

普段は一般病棟で勤務をしてますが、一般病棟にも重症な方はいらっしゃるので大変勉強になりました。

【CKD関連】
・糖尿病は糸球体、メサンギウム細胞へダメージを与える。⇒タンパクが尿細管へ出る⇒尿細管がダメージを負う⇒タンパクがより出る。⇒…といった悪循環が起こる。

・レニン・アンジオテンシン(RAS)阻害薬は輸出細動脈を拡げて糸球体内圧を下げ、腎保護作用を示す。

・Ca拮抗薬は輸出細動脈だけでなく、輸入細動脈も拡げるので腎保護にはRAS阻害薬が適している。

・RAS阻害薬の高K血症は利尿剤と併用して抑えることができる。

・腎炎を理解するためには病理学的な理解が必要。

・腎炎時の心構え

・尿所見をみる:尿蛋白、潜血の減少が重要。細胞性円柱が活動性を反映する。

・感染に注意:ステロイド等を治療で使用するため。また、IgGがタンパク尿として出てしまうため。

・血栓に注意:疾患だけでなく、ステロイドも血栓リスクを上げる。

・シクロスポリンの腎線維化の副作用に注意する。

・エリスロポエチン(ESA)は組織のO2の需要と供給のバランスで産生されている。腎障害時は腎組織のO2供給が少なくなっているが需要も少なくなっているため、フィードバックがかからずESA産生が少なくなってしまう。

・ESAには高血圧の副作用がある。

RAS阻害薬がどうして腎保護作用を示すのかをより具体的に知れました。ESAに高血圧の副作用があるなんて知らなかったです。

【その他】
・PISCS(ピスクス)(Pharmacokinetic Interaction Significance Classification System)という相互作用の評価と対応に役立つ考え方がある。

・Naranjoという有害事象因果関係判定スケールがある。

・PPIが低Mg血症を引き起こすことがある。

PISCSは今後是非勉強していきたい。相互作用のデータがなくて困った時に役立つかもしれない。

自身の知識の幅を拡げる勉強も沢山できました。

さいごに

③他施設の方と交流し刺激を得る。

学会1日目の夜にがん専門薬剤師の懇親会がありましたので、上司に連れて行ってもらえました。(がん専門薬剤師でないのに 苦笑)

こんな大人数の会でありました。(写真はボカシを入れてます)




恐縮しきりでありましたが、上司が色々な方を紹介してくださり、多くの方とお話しをする機会を頂けました。大変有難かったです。僕も頑張らないとなぁと刺激を頂けました。

久々の学会参加でしたが、非常に有意義な機会となりました。
来年は僕も発表しよう。患者さんの利益になるような活動とその成果を発表しよう。そうしよう。

ではまた次回。