【講義受講】抗菌薬を大事に使おう~AMRに立ち向かうために~

【講義受講】抗菌薬を大事に使おう~AMRに立ち向かうために~

先週、抗菌薬に関する講義を受講したのでその内容を書き留めます。

講師の先生は国立国際医療研究センターの忽那 賢志先生でした。
話がとても聞きやすく、面白かったです。

次の2つに内容をまとめておきます。

①なぜ抗菌薬を大事に使わないといけないのか?
②今後はどうしたらよいのか?

ではまず、

①なぜ抗菌薬を大事に使わないといけないのか?

今も昔も抗菌薬は細菌の薬剤耐性が問題となっています。ずっと細菌と人間のイタチごっこが続いています。これまでは薬剤耐性に対して新規薬剤開発で対応していたのですが、今後は薬剤の開発はあまりすすまないだろうと予測されています。なぜなら、製薬会社の利益があまりないからです。抗菌薬治療は大体1週間~2週間くらいで治療が終了します。ずっと使い続ける生活習慣病の薬剤なんかと比べると使用量が少なく、儲けが少ないのです。実際に新しく開発される抗菌薬は年々減ってきています。

ですので、このままの抗菌薬の使い方を続けるといつか

抗菌薬が全く効かない未来

が本当にやってきてしまいます。肺炎や尿路感染といったありふれた感染症でも「抗菌薬がないので、あなたの免疫次第です」となってしまいます。

本当かよ??そんなん大丈夫だろ?ってって思いたいところですが、他の国にはもうそんな状態になっているところもあります。

例えば、インドはすでに薬剤耐性がかなり進んでいるようです。肺炎桿菌の50%がカルバペネムに耐性があるとのこと。カルバペネムは抗菌薬治療の切り札的な薬剤ですが、最初から半分くらい効かんかもって感じで治療開始せねばならない状態です。

やばいなぁ。まじで世界終わったわ。と思いましたが、どうやら薬剤耐性と薬剤の使用量は相関するとのことで、使用量を減らせば薬剤耐性株が減ってくるとのことです。あぁ良かった。

ですので、このところ日本政府もきちんと動いています。厚労省のHPには次の記載があります。

抗菌薬の不適切な使用を背景として、薬剤耐性菌が世界的に増加する一方、新たな抗菌薬の開発は減少傾向にあり、国際社会でも大きな課題となっています。
2015年5月の世界保健総会では、薬剤耐性(AMR)に関するグローバル・アクション・プランが採択され、加盟各国は2年以内に薬剤耐性に関する国家行動計画を策定することを求められました。

これを受け、厚生労働省において、薬剤耐性対策に関する包括的な取組について議論するとともに、「 国際的に脅威となる感染症対策関係閣僚会議 」のもとに、「 薬剤耐性に関する検討調整会議 を設置、関係省庁とも議論及び調整を行い、2016年4月5日、同関係閣僚会議において、我が国として初めてのアクションプランが決定されました。

今後、「適切な薬剤」を「必要な場合に限り」、「適切な量と期間」使用することを徹底するための国民運動を展開するなど、本アクションプランに基づき関係省庁と連携し、効果的な対策を推進していきます。

*AMR (Antimicrobial resistance)

以上、厚労省HPより

日本ちゃんとしてるわぁ。

てなわけで、

②今後はどうしたらよいのか?
厚労省のHPにあるように、「適切な薬剤」を 「必要な場合に限り」、 「適切な量と期間」使用することを~が必要となってくるのですが、忽那先生は以下のシンプルな方法を提示していただけました。

かぜに経口第3世代セフェムを使わない
気管支炎にマクロライドを使わない
尿路感染症にキノロンを使わない

まず、内服抗菌薬の使用方法を見直すことが重要と言われました。なぜかというと、日本で使用される抗菌薬の9が内服薬だからです。また、上記の提言にはそれぞれ理由があります。まず、

かぜに経口第3世代セフェムを使わない
はそもそも風邪はウイルス感染だから抗菌薬は効かないのです。
ではなぜ風邪をひくと抗生剤が処方されるのかというと、細菌性二次感染の予防を目的に処方しているとのことです。一見なるほどなぁ思える理由ですが、細菌性二次感染を抗生剤で予防することは12255回処方すれば1は防げるといった確率なのです。これは抗菌薬でアナフィラキシーショックの副作用が起こる確率くらいであってメリットよりもデメリットが多いように思えます。100回に一回は発疹、10回に一回は下痢といった副作用もありますのでなおさらです。
また、経口第3世代セフェムの吸収率はとても低く、セフジトレンピボキシルは17%程度ですので、大体うんこになると先生はおっしゃっていました。笑

気管支炎にマクロライドを使わない
はマイコプラズマ感染症は肺炎に至ることなく自然治癒することがほとんどだからです。

尿路感染症にキノロンを使わない
は単純性尿路感染症の原因の9割を占める大腸菌のうち38%がキノロン耐性になっているからです。できるだけ第一世代セフェムのケフレックスやST合剤のバクタを使用するのが良いでしょう。

これらに加えて、講義では

ESBL産生大腸菌に対するカルバペネムは重症でなければセフメタゾールに変更する

・手洗いは感染対策の基本

家畜に対する抗菌薬使用と耐性菌の問題

などなどお話いただけました。

私は処方を直接することはできませんが、薬剤師としては処方支援を通して耐性菌の発生抑制に貢献したいなぁと感じました。大変良い勉強になりました。

ではまた次回