【薬の勉強⑥】芍薬甘草湯~効果は足のつりだけじゃない!?~

【薬の勉強⑥】芍薬甘草湯~効果は足のつりだけじゃない!?~

今日はこちらの情報を
芍薬甘草湯

芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)です。僕も使って楽になった経験がある漢方薬です。さっそく情報をまとめてみます。

【効能・効果】
効能・効果は一つです。

・急激におこる筋肉のけいれんを伴う疼痛、筋肉・関節痛、胃痛、腹痛

「けいれん」に対するお薬ですね。

僕がこの薬剤を提案することが多い場面は「吃逆(しゃっくり)」です。「透析患者さんの足のつり」にも処方されていることが多いと思います。

僕は「足のつり」がよく起こるのですが、これを飲むと抜群に効きます。ホント。

足のつり

さて次に、

【薬効・薬理】
添付文書には以下の2つの作用機序が記載されています。

(1) ノルアドレナリン神経系活性化作用
脊髄内α2-アドレノセプターの機能が亢進した糖尿病マウスにおいて、脊髄の下行性ノルアドレナリン神経系を活性化した。

(2) 子宮筋収縮抑制作用
・プロスタグランジン(PG)F誘発ラット子宮筋収縮を抑制した。
・cytosolic phospholipase A活性を抑制することで、ヒト子宮筋培養細胞のPGEの産生を抑制した。

んー。なんだか分かりにくい。笑

クラシエのサイト「漢方セラピー」に分かりやすいものがありました。

Q「芍薬甘草湯」は筋肉に作用すると聞いたのですが、具体的にはどの筋肉に作用するのでしょうか?
A 漢方薬の「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」は、骨格筋と平滑筋の両方の筋肉に作用して、痙攣や痛みに効果を発揮します。骨格筋とは、自分の意思でコントロールできる随意筋で、通常、筋肉という場合は骨格筋のことを指します。一方、平滑筋は、自分の意思でコントロールできない筋肉で、不随意筋(内臓筋)の一種です。血管や胃腸、子宮などの筋肉のことを指します。

「漢方セラピー」より引用

また、筋肉の収縮に関わる作用機序について、もうちょっと詳しいものがあったのでこちらも。

芍薬の主成分はペオニフロリン、甘草の主成分はグリチルリチンです。ペオニフロリンは神経筋シナプスにおいてCa2+チャネルからのCa2+イオンの細胞内流入を抑制し、甘草のグリチルリチンはCa2+イオン存在下でphospholipaseA2を介しK+イオンの細胞外流出を促進させ、これらによりアセチルコリン受容体が抑制され、筋弛緩作用を発現する。

漢方トゥデイ(2014年2月12日放送 頻用処方解説 芍薬甘草湯②)より一部引用

筋細胞は収縮タンパク(アクチンとミオシン)をもっており、アクチンとミオシンの滑走により収縮します。収縮にはCa2+イオンが必要とされています。

筋の収縮メカニズムについてはこちらのサイトが分かりやすいです。

さて、薬理を把握したところで、次にその効果を見てみます。

【臨床効果】
インタビューフォーム(ツムラ)に「こむら返り」に対しての4つの試験の結果が載っていました。そのうちの一つを記載します。

透析に伴う筋痙攣(こむら返り)21例の血液透析患者に、透析中あるいは透析後2.5~5.0gを頓服させ、筋痙攣(こむら返り)に対する有効性を検討したところ、以下のとおりであった。また、有効率は81.0%であった。


芍薬甘草湯の効果

有効率は81.0%ということでなかなか優秀な成績ですね。ちなみに僕の場合は100%効きます。笑


【使用上の注意】

副作用ですが、添付文書には以下の記載があります。

副作用発生状況の概要

副作用発現頻度調査(2013年10月~2014年9月)において、2,975例中、33例(1.1%)37件に臨床検査値の異常を含む副作用が報告された。


1.1%の副作用発現率です。ほぼ安全な薬剤であると思われますが、甘草(グリチルリチン)が含まれるため、偽アルドステロン症による浮腫・高血圧・低カリウム血症や、筋肉痛・脱力感といったミオパチーの副作用があります。

ですので、芍薬甘草湯は「アルドステロン症の患者・ミオパチーの患者・低カリウム血症のある患者」にはそれぞれ禁忌とされています。

偽アルドステロン症は必ずしも甘草の用量依存性に出現するわけではなく、ごくわずかな量でも反応する場合があるとされています。ほぼ安全な薬剤ですが、ループ利尿薬やチアジド系利尿薬などを併用する際は、より注意を払う必要があります。用法としては、頓用か必要最短期間での使用にとどめる事がより安全に使用するコツだと思います。

【尿路結石の痛みにも効く!?】
こむら返りだけでなく、尿路結石に対しても効果があるとのことで文献を探してみたところ以下の論文を発見しました。

尿路結石による疝痛発作時の芍薬甘草湯の効果(日東医誌 Vol.62No.3 359-362,2011)

要約しますと

(患者)
尿路結石による疝痛発作がある患者25名が対象。芍薬甘草湯群に11名、コントロール群(NSAIDs)に14名を振り分けて比較検討した。

(使用薬剤)
芍薬甘草湯は5.0g/回、NSAIDsはロキソプロフェンナトリウム60㎎/回を内服した。

(評価項目)
患者背景、経時的NRS(内服時、15分後、30分後、60分後)

(結果)
・患者背景(年齢、結石サイズ、受診前の処置の有無、開始時の疼痛の程度(NRS))に差はなかった。

・芍薬甘草湯群の内服時NRSは6.7±2.3点で、内服後15分で3.4±3.5点と有意に軽減した。NSAIDs群の内服時NRSは8.3±1.8点で、内服後15分で7.0±1.9点と有意に軽減した。その他の時点においても同 様の結果だった。

・内服困難症例、副作用を認めた症例はなかった。

(結論)
芍薬甘草湯は尿管結石の疝痛発作に対して即効性があり、NSAIDsよりも有意に鎮痛効果を認めた。

ふむ、すごい。尿管結石の疼痛の原因は尿管の平滑筋が痙攣、収縮し、尿の流れが遮断され、その上部のの腎盂内圧の上昇、拡張することにより起こるとされているため、芍薬甘草湯の筋弛緩作用がその原因を直接的に改善することができるとのことです。

一回の内服量が5.0gですので、ちょっと頑張って飲まないといけないですが。笑

僕の職場では尿管結石には普段ジクロフェナク坐剤がよく用いられている印象ですが、こちらは一日の使用量が100㎎を超えると「天井効果」といって効果が期待しにくいとされています。芍薬甘草湯との組み合わせの処方もアリかもしれませんね。


【芍薬甘草湯まとめ】

まとめると
芍薬甘草湯は、骨格筋と平滑筋の両方の筋肉に作用して、痙攣や痛みに効果を発揮する。
・安全な薬剤であるが、頓用か必要最短期間での使用にとどめることがより安全に使用するコツ。
・尿路結石による疝痛発作に対しても効く。即効性もある。

本日はここまでです。
最後まで読んでくださりありがとうございました。

では、また次回。